民泊サービスの規制緩和はどのような背景で議論されているのかご存知でしょうか。

2020年の東京五輪・パラリンピック開催の決定により海外から注目度があがったことや、政府の観光政策強化などの背景から、訪日外国人の増加傾向にあります。
日本政府観光局の資料によると、2015年の訪日外国人は、1,974万人。これは前年比147%の推進です。
今後増加する外国人観光客の受け入れ態勢の強化という側面以外に、地方の活性化という背景もあります。
その土地でしか味わえない生活習慣や文化などの体験型コンテンツはその地域の魅力の一つです。政府の規制改革会議では、民泊サービスを利用することで宿泊者にその地域の良さを伝えることができ、集客に効果が期待できると考えています。
規制改革会議は、住宅を活用した宿泊サービスを推進するため、ホテル・旅館を対象とする既存の旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)とは別の法制度を検討しており、2016年度中に民泊新法の整備を目指しています。
規制緩和の枠組
政府の規制改革会議では、住宅を活用した民泊サービスを推進するため、家主不在の住宅でも施設管理者を置けば営業を可能にするという見解を出しています。
民泊サービスの規制改革をどのような枠組みで検討されているのか、規制改革に関する第4次答申(規制改革会議)からまとめました。
家主居住型と家主不在型
民泊施設には家主居住型と家主不在型の2つの住居パターンがあります。
家主居住型とは、実施に個人が住んでいる(住民票がある)住宅です。家主不在型とは、個人が住んでいない、又は個人が住んでいても民泊サービス提供日に泊まっていない住宅です。家主不在型の場合、「民泊施設管理者」が存在することが条件となっています。
民泊サービスは届出制とし、以下の事項を義務化される見込みです。家主不在型の場合は、民泊施設管理者の登録が必要です。
- 民泊利用者名簿の作成・保存
- 衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
- 民泊利用者に対する注意事項(騒音、ゴミ処理等を含む)の説明
- 民泊を行っている旨の玄関への表示、苦情等への対応など
- 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供など
営業日数については、そもそも「ホテル・旅館」とは異なる住宅として扱うべきという考えから上限を「180日以下」としています。
民泊施設管理者
民泊施設管理者とは、民泊サービス利用者に対して、近隣とのトラブルに発展しやすい事項の注意喚起(騒音やゴミ処理など)や、近隣からの苦情対応、利用者名簿の作成・保存、衛生面の管理など民泊運営の重要な責任を担います。
もし、法令違反行為を行った場合は、業務停止、登録取消となり、不正行為への罰則も適用される可能性があります。
民泊施設管理者は行政への登録制となっており、住宅提供者本人または、物件を管理している方(不動産会社など)が登録資格を持つ予定です。
民泊利用者名簿の作成・保存
民泊の場合も、旅館業と同じく宿泊者名簿の作成が必要となります。
旅館業法(昭和23年法律第138号)第6条は、宿泊者名簿について次のように規定しています。
- 営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、当該職員の要求があったときは、これを提出しなければならない。
- 宿泊者は、営業者から請求があったときは、前項に規定する事項を告げなければならない。
引用元: 旅館業法(昭和23年法律第138号)第6条
宿泊者が外国人の場合、国籍とパスポートナンバーの記入も加えらています。当該職員とは、保健所の環境衛生監視員です。
民泊利用者名簿は単なる顧客名簿でなく、食中毒や感染症発生した場合その感染経路を特定するためのもの、または、火災や地震など等緊急時の宿泊客の確認などが宿泊者名簿を作成するのが主な理由です。
近隣住民からの苦情対応
地域住民から寄せられる苦情して、騒音の問題や、ゴミの扱いが挙げられます。民泊サービスの規制緩和に伴い、地域住民とのトラブルは今後さらに増える可能性があります。民泊施設管理者は、トラブルに発展しないように、民泊利用者に注意項目の伝達とトラブル発生時の迅速な対応が求められるでしょう。
衛生面の管理・ゴミ処理
来日外国人が民泊を利用する場合、生活習慣の違いからゴミの分別や喫煙について十分な説明が必要です。タバコを部屋で吸った後、その吸殻をベランダから捨てるなどの事例も実際にあるそうです。
日本人と外国人の考えた方の違い、文化の違いを想定して、事前にしっかりと注意することが衛生管理の面からも重要といえます。
地域住民からの苦情やトラブルといった内容ニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか?民泊に関するトラブルの実態を理解し、事前の対策と丁寧な対応を心がけることで、宿泊施設の運営リスクを軽減できるはずです。
仲介事業者
現行制度では、仲介事業者に旅行業登録が求められていましたが、今後の規制緩和によりその必要がなくなり、登録制となる見込みです。
新たな枠組みにおいて仲介事業者は、住居物件が民泊施設であることをインターネット上で告知し、行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供や、消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明などが義務付けられています。
また、不適正な民泊サービスであることを知りながら広告掲載している場合は、業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにすることも検討中です。
仲介事業者とは、民泊施設をネット上で公開し、利用者の募集から、予約受付、宿泊料金の請求を代行する業者を指します。
民泊サイトで有名なのが、Airbnb(エアビーアンドビー)です。日本法人が運営する「とまりーな」なども利用者が多い民泊仲介サービスです。 Airbnbの他に日本語で利用できる民泊仲介事業者まとめ
規制改革会議は、住居専用地域でも可能にする新法を今年度中に国会提出するよう求めており、自宅の空き部屋や誰も住んでいないマンションなどに旅行者に提供する民泊サービスがいよいよ本格化しそうです。
JTBによると、2016年の訪日外国人客数は、15年推計比19.0%増の2350万人と、過去最高を更新するとの予測をまとめています。インバウンドビジネスは需要の高まりとともに今後ますます発展するでしょう。
空室を利用した民泊サービスを検討するなら、今からでも遅くありません。